2011年12月16日配信 【毎日新聞】
全国の写真愛好家が腕を競う11年毎日写真コンテスト(毎日新聞社、日本報道写真連盟共催)で、ドキュメント大賞に高田毅さん(57)=南相馬市原町区=の作品「見せてあげたかった鯉(こい)のぼり」が輝いた。東日本大震災から9カ月の11日、受賞作を撮影した同市原町区萱浜地区で、高田さんの話を聞いた。【日報連・潮田正三】
萱浜地区は津波で多くの死者・行方不明者を出し、壊滅的な被害を受けた。高田さんの実家は同地区にあり、母屋を残し、すべて流されたが、人的被害はなかった。震災後、好きだった写真を撮る気力も無くしていた。だが、4月に桜が咲き出した頃、撮影に訪れた公園が、震災のがれき置き場になっているのを目にした。古里の被災状況を記録しておくのが、写真撮影を続けてきた自分の務めだと感じた。少しずつ被災状況にカメラを向けるようになった。
5月に実家を訪れた際、がれきの中に泳ぐこいのぼりを見つけた。それが知人の家のものだと知り、偶然、そこに訪れた知人と再会した。お互いの無事を喜び合ったが、知人は孫を亡くし、妻は行方不明で、鯉のぼりは初孫のために震災前に用意したものと聞いた。とてもカメラを取り出す気持ちにはなれなかったという。ところが、知人から「日ごろ、写真を頑張っているんだから、しっかりこの被災の様子を撮って」とかけられた言葉に、逆に勇気づけられてシャッターを切った。
今回の受賞について、高田さんは「正直言ってうれしいが、素直には喜べない複雑な気持ちです。これからも知人の言葉を胸に、古里の復興の歩みを記録していきたい」と抱負を語った。